
初心者のためのものづくり補助金ロードマップ:申請から事業の実施まで
■本コラムのポイント
- ものづくり補助金の目的、概要を解説しています。
- 申請するためのプロセス、必要書類が把握でき、申請に掛かる負荷が把握できます。
- 採択率を上げるためのポイントを把握できます。
目次
1.ものづくり補助金の概要
▼ものづくり補助金とは
ものづくり補助金とは、成長志向の中小企業者等が、物価高や賃上げ・最低賃金引上げ等の事業環境変化に対応し、”稼ぐ力”を強化するために、革新的な新製品・新サービスの開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等を支援する補助金です。(21次公募要領概要版より)
ものづくり補助金に申請する場合は、この目的に合致した事業である必要があります。
▼対象事業者
補助対象となる事業者は、中小企業者・小規模企業者等です。大企業、みなし大企業は対象外であり、一部の組合、財団法人、社団法人、医療法人なども対象外となります。
なお、21次公募から従業員が0名の場合は補助対象外となりましたので注意が必要です。
詳しくは、公募要領の「補助対象者」の頁をご参照ください。
※公募要領:https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html
▼申請枠と特徴
2025年4月25日に締め切られた19次公募から、申請枠は以下のようになっています。

2つの枠の特徴は以下となります。
枠 | 特徴 |
製品・サービス高付加価値化枠 | ・顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発するものが対象 ・単に機械装置等を導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象外 ・同業の中小企業者等や同一地域における同業他社において相当程度普及しているものの開発は、新製品・新サービス開発には該当しない |
グローバル枠 | 国内の生産性を高めるための事業で、以下の4つが対象 ・海外への直接投資に関する事業 ・海外市場開拓(輸出)に関する事業 ・インバウンド対応に関する事業 ・海外企業との共同で行う事業 |
自社が行う事業がどの枠の特徴に適しているかを判断した上で、申請する枠を決める必要があります。
▼基本要件
ものづくり補助金に申請するためには、以下3つの基本要件を満たす必要があります。

これらの基本要件を事業計画書上で示すことが重要となります。
注意点としては「②賃金の増加」があります。この要件は以下のいずれかを満たす必要があります。
- 給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の平均成長率以上増加
給与のカウント対象となる従業員は「各事業年度において、前月分の給与等の支給を受けた従業員及び役員とする」という内容があります。この条件では「給与支給総額の年平均成長率2.0%以上」という数値目標は社員の出入による要件未達成のリスクが高くなります。そのため、基本的には「1人当たりの給与支給総額の年平均成長率」を設定すべきですが、例えば新潟県の直近5年間の平均成長率は「3.5%」と非常に高い成長率となっており、高い成長率を目指す場合は人件費が大きく増加します。人件費の増加を上回る生産性向上ができるかどうかの見極めが重要になりますので、事業計画を良く練って、補助金を申請するかご検討ください。
2.申請プロセスの解説
申請プロセスは以下のスケジュールに詳しく記載されています(21次締切のスケジュール)。

申請における注意点は以下となります。
▼「事前準備」~「補助金交付候補の採択発表」まで
- GビズIDプライムを取得していること
申請は100%電子化されており、行政手続きに使われる「GビズIDプライム」が必須となります。 - 一定規模以上の申請を行う事業者はオンラインで口頭審査が必要であること(17次公募から)
事業者自身が審査員とオンライン(Zoom等)で面談し、事業計画の内容を回答する必要があります。
▼「補助金交付候補の採択発表」~「交付決定」まで
- 交付決定以前に発注したものは補助対象外となること
事業計画に記載され、かつ交付決定後に発注したものが補助対象となります。
公募締切から交付決定まで時間がかかるため(4~5か月)、スピーディーに事業を行いたい場合は注意が必要です。
▼「交付決定」~「補助金の支払」まで
- 実績報告を締切までに実施しなければ補助金が支給されないこと
補助金の対象となる事業は、報告期間に締切があります。いつまでに支払終えなければならないかを確認した上で補助金を申請するかご検討ください。 - 補助金は、全ての支払いが終わって、実績報告が承認された後でなければ支給されないこと
事業の投資に必要な費用は、事業者様が確保した上で支払う必要があります。自己資金で足りない場合は金融機関からの融資も検討する必要があるため、金融機関との相談をご検討ください。
▼「補助金入金」以降
- 補助金が支給されて以降、毎年4月時点で計6回の報告が必要なこと
補助金は毎年の報告が継続的に求められます。ものづくり補助金では実績報告後6年間、毎年1回の報告が求められます。事務手続きが煩雑な点も注意が必要です。 - 申請した事業で収益が多く得られた場合は「収益納付」が必要になる場合があること
規定されている計算式により、収益が得られたと認められる場合は、受領した補助金額を上限として収益納付が発生する場合がある点も事前に理解しておく必要があります。
3.必要書類と準備
申請に必要な書類は以下となります。

これらの書類の中で、準備に時間がかかるのは「事業計画書」になります。事業計画書以外の書類は、既存の書類や方向性が決まれば作成できるものですが、事業計画書は審査で自社で作成する必要があるため、時間がかかります。
公募開始から公募締切まで約2か月ですので、その2か月間で事業計画書を作成する必要があります。
4.採択されるための戦略とコツ
ものづくり補助金の審査観点は公募要領に明記されています。
ものづくり補助金では以下の項目で審査され、最初の5項目は事業計画書の内容で審査されます。
審査項目 | 概要 |
補助対象事業としての適格性 | ものづくり補助金の要件を満たすか審査されます。 |
経営力 | 経営目標が明確で、外部環境と内部資源を分析した戦略の中に補助事業が効果的に位置づけられており、会社全体に対して高い売上貢献が見込まれるかを評価されます。 |
事業性 | 補助事業が高い付加価値や賃上げ目標を実現できる計画であるか、課題と解決策が明確であるかを評価されます。 また、市場規模や成長性、顧客ターゲットとニーズ、購買意欲を具体的に分析し、顧客に選ばれる理由を把握しているか、競合・代替製品との比較で差別化や優位性が示されているかを評価されます。 |
実現可能性 | 必要な技術力や社内外の体制、資金調達力が十分で事業遂行が期待できるかが評価されます。 また、事業化までの方法・スケジュールや課題解決策が明確で妥当か、補助金に対する売上・収益の費用対効果や経費の整合性が示されているかを評価されます。 |
政策面 | 地域経済への貢献や、我が国の経済発展のために国の経済政策として支援すべき取り組みかが評価されます。 |
大幅な賃上げに取り組むための事業計画の妥当性(大幅賃上げ特例適用申請者のみ) | 大幅な賃上げに取り組むことができる妥当性があるか、評価されます。 |
加点項目 | 以下の項目から最大6項目について加点を行います。 ・経営革新計画が承認されている ・パートナーシップ構築宣言を公表している ・別紙4に定める再生事業者である ・DX認定を取得している ・健康経営優良法人2025に認定されている ・技術情報管理認証を取得している ・J-Startup、J-Startup 地域版に選定されている ・新規輸出1万者支援プログラムポータルサイトに登録が完了している(グローバル枠のみ) ・事業継続力強化計画を取得している ・賃上げ加点の要件に対応する計画である(年平均成長率4.0%以上) ・従業員規模50名以下の中小企業が被用者保険の任意適用に取り組む場合 ・えるぼし認定を取得している ・くるみん認定を取得している ・申請締切日を起点にして、過去3年以内に事業承継している ・成長加速マッチングサービスに課題を登録している |
減点項目 | ・過去3年間にものづくり補助金の交付決定を1回受けている ・ものづくり補助金で交付決定を受けたが、基本要件を達成できなかった ・過去の補助金において、加点を受けたが加点要件を達成できなかった場合 ・次の補助金で、直近の事業化状況報告時の事業化段階が3段階以下の場合:事業再構築補助金、ものづくり補助金、新事業進出補助金 |
上記から、採択の可能性を上げるためには、
・事業計画書が審査観点に合致した品質の高い計画になっていること
・多くの加点を得ていること
が必要になります。
事業計画書の品質を上げるには、具体的で妥当性・実現性が高い計画を練り上げることが必要になります。ただし、この作業は事業者様の新たな事業をより具体化するものであり、事業の成功確率アップやリスク回避につながる大きなメリットにつながります。
補助金の獲得だけでなく自社事業の成功につながるよう、具体的で妥当性・実現性の高い事業計画を作成しましょう。
5.まとめ
ものづくり補助金は最大で4,000万円の補助金を得られる規模の大きな補助金です。一方で、投資規模も大きくなるため事業者様のリスクも大きくなります。また、補助金の申請・事後報告などの手続き負荷も想定する必要があります。
当社は、精度の高い事業計画の作成、申請支援の豊富な実績がございます。応募だけでなく、事業の成功を伴走するためのメニューをご用意しております。ものづくり補助金申請をお考え中の新潟県内の事業者の方は是非お気軽にご相談ください。
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文責:鈴木俊雄