事業承継とM&Aを支援する事業承継・引継ぎ補助金:申請から事業の実施まで
■本コラムのポイント
- 2024年度も実施される事業承継・引継ぎ補助金の目的、概要を解説しています。
- 申請するためのプロセスが把握でき、申請に掛かる負荷が把握できます。
目次
1.事業承継・引継ぎ補助金の概要
▼事業承継・引継ぎ補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金の事業目的は以下となっています。
「事業承継・引継ぎ補助金は、事業再編、事業統合を含む事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業・小規模事業者に対して、その取組に要する経費の一部を補助するとともに、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎに要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、事業承継、事業再編・事業統合を促進し、我が国経済の活性化を図ることを目的とする補助金です。」(引用元:事業承継・引継ぎ補助金ホームページ)
事業承継・引継ぎ補助金に申請する場合は、この目的に合致した事業である必要があります。
▼申請枠と特徴
事業承継・引継ぎ補助金は、承継・引継ぎに様々な形態があるため、複数の枠で支援対象を分けています。ざっくり分けると以下のようになります。
枠 | 特徴 |
経営革新枠 | 引き継いだ後に、以下のいずれかの経営革新的な事業を行う場合にその投資に対して一部を補助し、経済の活性化を図る。 ・デジタル化に資する事業 ・グリーン化に資する事業 ・事業再構築に資する事業 |
専門家活用枠 | 事業者のM&Aを支援する専門家の費用(経営資源の引継ぎに要する経費)の一部を補助し、経済の活性化を図る。 |
廃業・再チャレンジ枠 | 再チャレンジに取り組むための廃業に係る経費の一部を補助し、経済の活性化を図る。 経営革新枠、専門家活用枠との併用が可能。 |
それぞれの枠は狙いが異なるため、補助対象経費も異なるものとなっています。自社の事業承継・引継ぎに適した枠を選択して申請しましょう。
▼申請枠ごとの補助額と補助率
以下に枠ごとの補助上限額、補助率を示します。補助率が1/2~2/3となっているものは条件に応じて設定されるものとなります。例えば、経営革新枠は以下のいずれかに該当すれば補助率が2/3になります。
①小規模企業者である
②物価高騰の影響等により営業利益率が低下してい
③直近決算の営業利益または経常利益が赤字である
④中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等からの支援を受けている証明書類を提出できる、
詳しくは、下記ページにある、枠ごとの公募要領の「補助上限額、補助率等」の頁をご参照ください。なお、補助対象経費は交付決定後に発注したもののみが対象となります。交付決定前に発注した経費は補助対象外となりますのでご注意ください。
※公募要領:https://jsh.go.jp/r5h/materials/
▼対象事業者
補助対象となる事業者は、日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営む中小企業者・小規模企業者等です。
※大企業、みなし大企業は対象外です
※社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等)は中小企業者等に含まれません。
詳しくは、下記ページにある、枠ごとの公募要領の「補助対象者」の頁をご参照ください。
※公募要領:https://jsh.go.jp/r5h/materials/
2.補助金の申請から補助金交付後の報告までの流れ
申請から補助金交付後の報告までの流れは以下の通りです。
申請における注意点は以下となります。
▼「事前準備」~「補助金交付候補の採択発表」まで
- GビズIDプライムを取得している必要がある
申請は100%電子化されており、行政手続きに使われる「GビズIDプライム」が必須となります。 - 認定支援機関や専門家への相談が必要である(経営革新枠、廃業・再チャレンジ枠)
経営革新枠と廃業チャレンジ枠では「認定支援機関」に事業計画書を確認してもらい、蓋然性につき確認を受けた計画書が必要となるため、申請前から認定支援機関や専門家に相談しましょう。
▼「補助金交付候補の採択発表」~「交付決定」まで
- 交付決定後に発注したものが補助対象となる
公募要領に以下の表が明記されており、補助事業期間内の発注、支払のみが補助対象となる点にご注意ください。
▼「交付決定」~「補助金の支払」まで
- 実績報告を締切までに実施しなければ補助金が支給されない
補助金の対象となる事業は、報告期間に締切があります。いつまでに支払終えなければならないかを確認した上で補助金を申請するかご検討ください。 - 補助金は、全ての支払いが終わって、実績報告が承認された後でなければ支給されない
事業の投資に必要な費用は、事業者様が確保した上で支払う必要があります。自己資金で足りない場合は金融機関からの融資も検討する必要があるため、金融機関との相談をご検討ください。
▼「補助金入金」以降
- 補助金が支給されて以降、5年間の報告が必要
補助対象事業完了後、5 年間、事務局が指定する所定の日までに当該事業についての事業化状況を事務局へ報告する必要があります。 - 申請した事業で収益が多く得られた場合は「収益納付」が必要になる場合がある
規定されている計算式により、収益が得られたと認められる場合は、受領した補助金額を上限として収益納付が発生する場合がある点も事前に理解しておく必要があります。
3.必要書類と準備
事業承継・引継ぎ補助金では、枠や事業承継・引継ぎの形態により必要な書類が異なります。「事業計画書」「認定支援機関による確認書」「履歴事項全部証明書」「代表の住民票」など必要な書類は多岐にわたりますので、早めに準備することが重要です。
4.採択されるための戦略とコツ
事業承継・引継ぎ補助金では、審査観点が枠ごとの公募要領に明記されています。例えば、経営革新枠では以下の項目で事業計画を審査されます。
審査項目 | 概要 |
経営革新等に係る取組の独創性 | 技術やノウハウ、アイディアに基づき、ターゲットとする顧客や市場にとって新たな価値を生み出す商品、サービス、又はそれらの提供方法を有する事業を自ら編み出していること。 |
経営革新等に係る取組の実現可能性 | 商品・サービスのコンセプト及びその具体化までの手法やプロセスがより明確となっていること。事業実施に必要な人員の確保に目途が立っていること。販売先等の事業パートナーが明確になっていること。 |
経営革新等に係る取組の収益性 | ターゲットとする顧客や市場が明確で、商品、サービス、又はそれらの提供方法に対するニーズを的確に捉えており、事業全体の収益性の見通しについて、より妥当性と信頼性があること。 |
経営革新等に係る取組の継続性 | 予定していた販売先が確保できない等、計画通りに進まない場合も事業が継続されるよう対応が考えられていること。事業実施内容と実施スケジュールが明確になっていること。また、売上・利益計画に妥当性・信頼性があること。 |
また、加点項目として以下のような項目(抜粋)があります。
- 「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けている
こと - 交付申請時に有効な期間における「経営力向上計画」の認定、「経営革新計画」の承認又は「先端設備等導入計画」の認定書を受けていること
- 交付申請時点で「健康経営優良法人」であること。
- 交付申請時点で「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けていること
など
上記から、採択の可能性を上げるためには、
・事業計画書が審査観点に合致した品質の高い計画になっていること
・できるだけ多くの加点を得ていること
が必要になります。
事業計画書は独創性、実現可能性、収益性、継続性の観点でチェックされるため、品質の高い計画書を練り上げることが必要になります。事業計画書は事業者様の新たな事業をより具体化するものであり、事業の成功確率アップやリスク回避につながる大きなメリットにつながりますので、補助金の獲得だけでなく自社事業の成功につながるよう、具体的で妥当性・実現性の高い事業計画を作成しましょう。
5.まとめ
事業承継・引継ぎ補助金は最大で950万円の補助金を得られますが、投資規模も大きくなるため事業者様のリスクも大きくなります。また、補助金の申請・事後報告などの手続き負荷も想定する必要があります。
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文責:鈴木俊雄